07/01/31

ギシリ、ギシリ、と体の軋む音が聞こえる気がする。
っつーか確実に軋んでる。

「あの〜、俺、フツーに助平なことしたいって言ったんですけど」

清雅はあっさりと無視してますます俺を締めつける。
荒縄が肌に食い込んで地味に痛い。
自慢じゃないが、俺は痛いのが嫌いだ。
頭を起こして自分の体がどうなってるか、恐々と確認する。
案の定、春本でもお目にかかったことのないような大変な状態になっている。

「マジすか、コレ。勘弁して。陸御史には加虐趣味があるって言い触らすぞ」

「今更だろ」

あくまで減らず口をやめない俺に苛立ったように、締めつけを強めた。
うう、とくぐもった声が出る。

「…や、いじめっこに見えて本当は心優しいってお約束を期待してる奴がいるかもしんねーじゃん」

「いたとしたら余程の馬鹿か、犯罪者だ」

手を休めないまま、清雅は微かに笑った。
相変わらず悪そうな笑い方だったけど、ちらりと見えた犬歯がなんか可愛かった。

しばらくして、清雅はひどく上機嫌な様子で立ち上がると、爪先で俺の体を無造作に転がした。
ごろん、とうつ伏せになった俺の上に遠慮も何もなく座り込むと背中の結び目を引っ張った。
勢い、えび反りになり、肉や内臓が悲鳴を上げる。
えづきながら反り返った俺の、頬や耳を甘噛みする。
その仕草は母猫が子猫をいたわるようなのに、同時に幾重にも巻かれた荒縄で乳首を挟むように潰した。
潰すどころか、縄を細かくずらしたりするものだから、堪ったものではない。
思わずぐうっと呻くと、愉快そうに、結び目を更に己に引き寄せる。
ますます悶え苦しむ俺の姿が心底、可笑しくて仕様がないようだ。
そのうち縄で遊ぶのも飽きてきたのか、指を使って弄り始めた。
冷たい指は痛んだ局部に優しく、それと同じくらいの官能を与えた。
さっきまでとは違う意味で悶え始めた俺の口に、不意に布が巻かれた。
猿轡だ。
ああ、なんだかこの状況によく似た遊びを知っている。
お馬さんごっこだ。
だとしたら、俺に乗っかる清雅はガキ大将か。
現実から逃避した妄想にほくそ笑んだが、首にかかった縄が引っ張られてすぐに現実に戻った。
容赦なく引かれ、とうとう上向いた顔は、俺を覗き込む清雅の顔と重なった。
無茶な体勢に体は撓り、溢れた唾液はぬるぬると顎を伝う。
顎から首筋に伝ううちに冷めたのか、裸の胸にそれはひどく冷たく、やがて床に零れた。
それと同時に、ついに生理的な涙がぼたぼた零れ落ちた。
潤んだ視界の中、間近で見る清雅の瞳は暗い炎に燃えていた。

こんな俺を見たら百人中百人は哀れんでくれると思う。
痛いのが大嫌いなくせに、クソガキに散々玩ばれて。
けれど、こうやって清雅に途方もない痛みと物騒な恋情を寄せられているときにこそ、

生きている。

そう、感じるのだ。


[赤い糸で縛って]