07/11/09

ふと気がつくと、私の膝に、子供の頭がのっている。
黎深だ。
跪いて、額をこすりつけるようにして、縋りついている。
私はそれを見下ろしている。
闇の中、私は寝台に腰掛け、物思いに耽る。
ぐずぐずとはしていられない。
明朝には、あの煌びやかな戦場に戻らなければならないのだ。
あの、王のもとに。
それを察した黎深は夜が更けても私の傍から離れず、
私は適当にあやしながらも、ひどく血生臭いことばかり考えていた。
その私の膝に、黎深が縋りついている。
あにうえ、
高い声とともに、小さな白い花が咲く。
炭も熾していない部屋は凍えている。
かわいそうに、そんなに震えて、もうお戻り、
いいえ、いいえ、
小さな子は息を詰めて、悲壮な様子だ。
物好きだなぁ。
赤い指が私の帯を外すのを、ただじっと見ていた。

細い脚を折り畳むようにして、押し入る。
幼い体は柔らかく、私の希望にすんなり応える。
小さな口で愛でられた其れはひどく硬くなっているから、
受け入れるのは辛いだろうに、服を噛んでじっと耐えている。
服は下衣しか乱れていない。
寒いからだ。
己の体で暖めてやる甲斐性もない。
黎深は服が体に擦れるのがもどかしいのか、しきりに身を捩っている。
それを見つめながら、ゆるく動いていた。
しばらくしてグッと突き上げて、
近づいた顔に不意に気まぐれを起こし、つんと尖った鼻を舐める。
冷たい。
ひどく驚いた。
寒さに、頬が切れてしまわないだろうか。
あまりに柔らかそうな頬に、己が何をしているかも忘れて、ふと不安になる。
ひび割れがないか指を這わすと、濃い睫毛がぶるり、と震え、
ぼたぼたと涙を零した。
とめどなく流れる雫は赤い頬にじわりと滲みこんでゆく。
どうにも見ていられず、まだ産毛しかない、つるりとした内腿を噛む。
そのまま深く入り込むと、くぐもった声が上がる。
見やると、まだ泣いている。
溢れる涙は広がって滴り、頬全体を覆っている。
僅かな月明かりに、つやつやと光る。

「黎深」

よりいっそう震えた睫毛から、黒目がちな瞳が覗く。
恐る、おそる。
その仕草があまりにも哀れっぽいせいで、

一度だけ、もう一度だけ、
お願いします、


私はまた騙されるのだった。


[ なんかせつない ]